原稿:気圧と風の関係

圧力ってなに?と混乱する人に風向きの説明を試みる。わかりやすく説明したサイトはちらほらあるけど、どこもまあ、微妙な感じ。おなじ微妙な感じなら、自分でかいてみるのもいいだろう。そう思って、順を追って説明しようと試みる。とはいえ、文章になっていないのがね。あと、フリーハンドのきたない絵というのもどうかともおもうものの。

気体の状態には圧力・温度・密度で特徴づけられる

  • 圧力:気体の分子の運動が外向きに及ぼす(面積当たりの)力
  • 温度:気体の分子の運動のうち熱として持つエネルギー
  • 密度:気体の分子の多さ、(体積当たりの)重さ

気圧、気温

空気の圧力、温度のこと

気圧の差が空気が空気に対して及ぼす力になる


左の空気は気圧 p で周囲のあらゆる方向を押している。右の空気はそれよりも大きな気圧 q で周囲を押している。このふたつの空気が赤線で示された壁で触れ合っているとする。すると、赤線の壁は、左向きにq-pの大きさの力を受ける。このように、気圧の差が力となる。これは気圧傾度力と呼ばれる。

空気の運動

空気の運動が風。空気が力を受けると運動する、すなわち、風が吹く、あるいは、強まる。

空気に働く力

気圧傾度力と摩擦力による風

摩擦力は運動と逆向きに働く。気圧の高い方から低い方に風が吹くとき気圧傾度力と摩擦力が釣り合って、一定の速度の風が実現する。

図で風は右向きに吹いている。赤矢印が摩擦力、○が空気の塊、黒矢印が気圧傾度力

コリオリ力

コリオリ力は北半球では風の向きに対し垂直右向きに働く。これは、自転している地球の上で風をみているため。力が働かなければ物体は同じ方向に同じ速度で運動する。しかし、地球の上で見ていると、自転によって見ている方向が回転するため、同じ向きに動く空気が時々刻々別の向きを向くように感じられる。

地球上の平面を四角で囲ってみた。赤矢印は北と東を指し示す。黒矢印の向きを常に向いて動く風があるとする。

数時間後の様子。黒矢印の向きは変わらず、四角で囲った地球上の平面の向きが変わっている。

それぞれの時刻での地球上の平面を切り出した図が左側、右側は東西、南北をそろえた様子。黒矢印で示された風向きが、右回りに書いているのがわかる。このことを、風に対して右向きの力があると考えて、コリオリ力が働いている、という。

気圧傾度力コリオリ力による風


低気圧のまわり、高気圧のまわりをぐるぐる回る風向き。

気圧傾度力コリオリ力と摩擦力による風


低気圧に吹き込む風向き。

ここのつめ:民・自対立―3党合意に立ちかえれ (2012/8/8 朝日新聞 社説)

 社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、国民の生活が第一みんなの党などが内閣不信任決議案、野田首相に対する問責決議案を出した。自民党も首相に衆院解散の確約を求め、両決議案の提出を検討している。関連法案の成立が危うくなりかねない。
 首相と谷垣自民党総裁に求める。一体改革の実行が最優先だ。
 両党対立の背景には解散時期をめぐる思惑の違いがある。だが、一体改革を潰してしまったら、両党は次の総選挙で国民に何を訴えるのか。
 経済のグローバル化、巨額の財政赤字少子高齢化のなか、どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い。衆参の「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める知恵と力、度量が必要だ。かりに自民党が次の総選挙で第1党に返り咲いても、参院では「ねじれ」は続き、2大政党の足の引っ張り合いがまた繰り返される。政治の仕事は問題を解決することである。問題をつくることではない。
(399字)



政局ってあんまり好きじゃない。この社説で論じているのは政局で、遵法意識とか市場の反応とかはそれを取り巻く環境、お飾りとしてちりばめられている。ただ、テーマが政局で一貫しており、かつそのことに自覚的でありそうなのは悪くない。「どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い」から「「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める」必要がある、という論理展開がこの文章のクライマックス。大変気持ち悪いけど、政局の範囲内で正しい現状認識なんだろう。そして、どうしてそうなったか、どうすれば打破できるか、は、きっと政局をみていても考えられないものなのだろうとも思う。


答え合わせ:finalventさんは、この三党合意に破滅を見るらしい。 http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20120808/1344389850 「問題をつくること」という言い回し、残しておいたんだけど、とくに深い理由はなくて、とっても不思議なのにぴったりだったらから、という程度なのだった。


原文
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、与野党の対立が続いている。

 国民の生活が第一みんなの党などがきのう、衆院内閣不信任決議案を、参院野田首相に対する問責決議案を出した。

 これとは別に、自民党も首相に衆院解散の確約を求め、両決議案の提出を検討している。

 自民党の姿勢によっては、関連法案の成立が危うくなりかねない。

 首相と谷垣自民党総裁にあらためて求める。

 ここは一体改革の実行が最優先だ。両党首が先頭にたって事態を打開し、関連法案の成立を確実にすべきだ。

 両党首に聞いておきたい。

 一体改革に合意したのはなぜなのか。1千兆円を超す借金を放置しては、社会保障などが立ちゆかない。そう信じたからこそ決断したのではなかったか。

 両党対立の背景には解散時期をめぐる思惑の違いがある。

 だが、一体改革を潰してしまったら、両党は次の総選挙で国民に何を訴えるのか。葬ったばかりの「10%への消費増税」を再び掲げるのか。それでは何のための、誰のための選挙なのかわからないではないか。

 そもそも、最高裁から違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」が1年以上放置されている。このまま総選挙をすれば無効の選挙区が相次ぐことになる。憲法違反を恐れる感覚が麻痺(まひ)しているのではないか。

 それだけではない。法案が不成立なら「改革できない日本」という危険なメッセージを世界の市場に送ることになる。

 日本が市場から不信任を突き付けられたらどう対処するのか。両党首にはっきりした方針があるようには見えない。

 経済のグローバル化、巨額の財政赤字少子高齢化のなか、どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い。

 衆参の「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める。そうした知恵と力、度量こそが必要な時代だ。

 政権交代から3年、やっと実るかに見えた民主、自民、公明の3党合意を反故(ほご)にしてしまったらどうなるか。

 かりに自民党が次の総選挙で第1党に返り咲いても、参院では公明党と合わせても半数に満たない。「ねじれ」は続き、2大政党の不毛な足の引っ張り合いがまた繰り返される。

 首相と谷垣氏に念を押しておこう。

 政治の仕事は問題を解決することである。問題をつくることではない。

やっつめ:高速ツアーバス 利用者が選択しよう (2012/7/29 毎日新聞社説)

 高速ツアーバスを運行する貸し切りバス業者の8割超で法令違反が見つかった。複数運転手の日雇いや名義貸しなどだ。国交省は事故後、1人の運転手が夜間運行できる距離の上限を引き下げ、遠隔地での点呼や運行管理を義務づけ、運転手の休憩時間も厳格に定めた。こうした新基準の下では採算が合わないとして、数十社以上が事業から撤退したとされる。また、旅行会社がツアーを企画し、バス会社に運行を委託する形態も望ましくない。乗客の安全に対する責任の所在があいまいになるためだ。
 今回の監査結果で、これまでの国交省の安全チェックが不十分だったことも明らかになった。その原因として、監査担当者不足も指摘される。監査実施後、国交省は今後も事業を継続する高速ツアーバス事業者約230社のリストをホームページで公表した。今回の監査結果も記載されている。利用者が事業者を選択する際に大いに参考になるはずだ。
(386字)

原文
http://mainichi.jp/opinion/news/20120729k0000m070132000c.html

 高速ツアーバスを運行する貸し切りバス業者の8割超で法令違反が見つかった。7人が死亡、39人がけがをした4月の関越道のバス事故を受け、国土交通省が5〜6月、298社を重点監査した結果だ。

 250社で道路運送法に基づく法令違反が見つかり、うち48社は、複数運転手の日雇いや会社の名前を第三者に利用させる「名義貸し」など重大、悪質な違反だった。運転手の乗務時間の基準がほとんど守られていない社も7社あった。

 高速ツアーバスの利用者は近年急増し、年間600万人にも上る。規制緩和の中、過当競争に勝つために安全を軽視してきたとの批判が出ていた。そんな業界の体質が数字にも表れた形だ。

 国交省は事故後、1人の運転手が夜間運行できる距離の上限を670キロから400キロに引き下げる新たな基準を設け、今月20日から適用を始めた。新基準では、遠隔地での第三者による点呼や運行記録計を使った運行管理を義務づけ、運転手の休憩時間も厳格に定めた。

 こうした新基準の下では採算が合わないとして、監査対象外の会社を含め数十社以上が事業から撤退したとされる。

 大勢の人を乗せて長距離を移動する輸送機関にとって安全は命綱のはずだ。安全確保のコストに耐えられないならば撤退はやむを得ない。

 また、関越道の事故のケースのように、旅行会社がツアーを企画し、バス会社に運行を委託する形態も望ましくない。乗客の安全に対する責任の所在があいまいになるためだ。国交省は旅行会社にバス事業の許可を取ることを強く指導し、今後1年間かけて現行の仕組みの転換を図る方針だ。当然の対応だろう。

 今回の監査結果で、これまでの国交省の安全チェックが不十分だったことも明らかになった。その原因として、監査担当者不足も指摘される。限られた人員の中でどう乗客の安全第一を徹底させるのか。今後設置する予定の有識者会議でしっかり議論してもらいたい。

 監査実施後、国交省は今後も事業を継続する高速ツアーバス事業者約230社のリストをホームページで公表した。保有車両数や、自主的な安全への取り組み内容のほか、今回の監査結果も記載されている。

 夏休みの帰省や観光など利用者の増加が予想される時期であり、利用者が事業者を選択する際に大いに参考になるはずだ。規制強化を受け、路線によっては、値上げや便数の減少も予定されるが、安全には代えられない。細かい安全への取り組みをホームページに載せる事業者もある。利用者の選択眼も問われる。

ななつめ:ウナギ減少―資源保護に転じる時だ (2012/7/27 朝日新聞 社説)

 ウナギのかば焼きの値上がりが続く。原因は稚魚であるシラスウナギの3年続きの不漁だ。日本は、世界のウナギの約7割を消費しており、保護に率先して取り組む責任がある。
 ニホンウナギは1970年代の1割程度にまで減った。卵から完全養殖する技術は実用化にまだ遠い。当面はシラスウナギの養殖が頼りだ。
 日本と中国、韓国、台湾の研究者に業界代表も加わった東アジア鰻資源協議会は、産卵のため海に戻る親ウナギの一時的な漁獲制限を求めた。シラスウナギ漁も総合的に管理することが必要だ。緊急提言は、河川環境の保全なども挙げている。政府も中国など関係国との協議を始めた。
 ヨーロッパウナギはすでに絶滅危惧種とされ、ワシントン条約で国際取引が規制されている。米国は、アメリカウナギに加えてすべてのウナギの規制をするよう、提案する構えだ。科学的な調査を踏まえ、国際的な資源の保護と利用の両立を図るモデルをつくりたい。
(395字)

疑問:親ウナギの漁獲制限は、シラスウナギの不漁対策としての効果を何年後から発揮すると考えられているのか。
削除した部分への突っ込み:エルニーニョの影響で東アジアに戻れないなら、不漁・豊漁が数年周期で訪れてきたのではないか。エルニーニョは、気候変動のせいで70年代から減少したことの理由にはならないのではないか。
削除した部分への突っ込みその二:ウナギの生態が謎のままウナギを絶滅させるわけにはいけない、とは意味不明。生態が解明されなければウナギの恒常的な不漁は改善されず資源の枯渇を招くだろうし、産卵地域やそこでの生態が解明されれば資源保護のための有効な手だてを打つことができるようになるだろう。好意的に解釈するなら、生態解明という研究を継続するためには、まずは、現在のうなぎ漁を巡る乱獲などの問題点の改善を図ることで資源保護をせよ、ということなのかもしれない。そうなのだとすれば、この社説で取り上げるべきは、研究ではなく、全国の、あるいは世界の漁業の問題点の指摘であろう。

原文
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 今こそ、資源としてのウナギの保護に乗り出すべきだ。さもないと、私たちの食卓から消えることにもなりかねない。

 ウナギのかば焼きの値上がりが続く。原因は稚魚であるシラスウナギの3年続きの不漁だ。

 日本は、世界のウナギの約7割を消費しており、保護に率先して取り組む責任がある。

 その生態を考えれば、国際的な協調が欠かせない。ニホンウナギは3千キロかなたの太平洋で産卵する。幼生は黒潮に乗って運ばれ、日本や中国などの川を上って数年から十数年かけて成長し、産卵場所に帰る。

 ニホンウナギの資源量は1970年代の1割程度にまで減った。乱獲に加え、生育の場である河川環境の悪化がある。

 気候変動の影響もいわれる。エルニーニョなどの影響で産卵場所がずれるなどして幼生が黒潮に乗れず、東アジアに戻れなくなるとも考えられている。

 卵から完全養殖する技術は開発が続いているが、コストも量も実用化にまだ遠い。当面は天然のシラスウナギをとってからの養殖が頼りだ。

 日本と中国、韓国、台湾の研究者に業界代表も加わった東アジア鰻(うなぎ)資源協議会はこの春、緊急提言をした。漁獲を規制することが急務とし、とりわけ、産卵のため海に戻る親ウナギの一時的な漁獲制限を求めた。

 つまり、食べるのは当面、養殖だけにしよう、というのだ。

 日本での消費のうち、天然物は約0.1%だ。養殖物も味では負けない。天然物は将来、資源が回復したときの楽しみとしてよいのではないか。

 シラスウナギ漁も、現在は、都道府県ごとに漁期を定める方法で制限されている。科学データに基づき日本全体で総合的に管理することが必要だ。

 緊急提言は、河川環境の保全なども挙げている。

 政府も中国など関係国との協議を始めた。10年以上にわたる協力の実績がある協議会とも連携してほしい。

 東京大の研究チームは09年、天然ウナギの卵を初めて洋上で採ったが、その一生はなお謎に包まれている。謎のまま絶滅させるわけにはいかない。

 ヨーロッパウナギはすでに絶滅危惧種とされ、ワシントン条約で国際取引が規制されている。米国は、アメリカウナギに加えてすべてのウナギの規制をするよう、提案する構えだ。そうなれば、日本など東アジア諸国への影響は大きい。

 科学的な調査を踏まえ、国際的な資源の保護と利用の両立を図るモデルをつくりたい。

むっつめ:最低賃金引き上げ 共働きでも貧困の現実(2012/7/26 毎日新聞社説)

 最低賃金生活保護よりも低い「逆転現象」がまだ11都道府県で残っている。2012年度の地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会の小委員会は平均7円引き上げることを決めた。最高額で引き上げたとしても北海道と宮城県はまだ生活保護に届かない。
 可処分所得が国民の平均値の半分に満たない「相対的貧困」を見ると、日本の子育て世帯は先進国では最も高いレベルだ。子育て世帯の失業率は0.4%。働いているのに貧困にあえいでいる子育て世帯が多い。
 もともと主婦のパートや学生アルバイトなどの非正規労働者の賃金は低く抑えられてきた。最低賃金の改善が始まったのは、07年の最低賃金法改正で地域ごとに最低賃金を定め、違反者への罰金が引き上げられてからだ。08年の自公政権時には「生活保護との整合性だけでなく小規模企業の高卒初任給との均衡を勘案し5年間で(最低賃金を)引き上げる」ことが打ち出された。実現すべきだ。
(396字)

もとの社説は悪文。「働く人の賃金が生活保護よりもひくいのはおかしい」って、さまざまな問題をはらんでいる複合的なものを、生活保護受給額だけを基準に、おかしい、と主観的に断じるのはいかがなものか。あと、子育て世代の失業率が低く相対的貧困が多いことだけから、共働きでも貧困から「抜け出せない」ことをいうのはデータの論理的な解釈ではない。こういった主観的な言葉や内容の無意味な繰り返しを排除して、上の縮約をつくってみた。子育て世代に焦点を当てるのは政策としては正しい。しかし、この文章では、何の解決にも寄与しないだろう。

追記:そもそも、貧困と「最低」賃金にどれほどの関連があるのか、興味はある。子育てを錦の御旗に掲げるくらいだから、その貧困の実態についてはとてもくわしいのだろう。

原文
http://mainichi.jp/opinion/news/20120726k0000m070138000c.html

 働く人の賃金が生活保護よりも低いのはおかしい。産業や職種にかかわりなく、すべての働く人は法律で定めた最低賃金より多くの賃金を得ることが保障されているが、その最低賃金生活保護よりも低い「逆転現象」がまだ11都道府県で残っているのだ。これでは働く意欲がそがれ、モラルハザードが起きる。最優先して改善すべき課題である。

 2012年度の地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会の小委員会は平均7円引き上げることを決めた。昨年に続き低い引き上げ水準である。首都圏や関西圏を中心にした「逆転現象」状態の11都道府県には一定の幅を持たせた目安額を定め、地域の審議会に具体額の決定を委ねることになったが、最高額で引き上げたとしても北海道と宮城県はまだ生活保護に届かない。今年度での解消が無理な場合は「原則2年以内に生活保護との逆転現象の解消を目指す」とされたが、もっと深刻に考えるべきではないか。

 結婚ができない、子どもが産めないという現役世代の貧困は少子化をさらに悪化させ、子育て世帯では子どもの健康や教育に暗い影を落としている。経済にも悪影響を及ぼす。可処分所得が国民の平均値の半分に満たない「相対的貧困」を見ると、日本の子育て世帯は14.2%で、先進国では最も高いレベルだ。子育て世帯の失業率は0.4%。働いているのに貧困にあえいでいる子育て世帯がいかに多いかを示している。

 もともとわが国は正社員の男性が一家の生活費をまかなう賃金を得るという考え方が強く、主婦のパートや学生アルバイトなどの非正規労働者の賃金は低く抑えられてきた。90年代以降に労働者の非正規化が進められ、現在では被用者全体の4割近くを占めるに至ったが、伝統的な雇用・賃金モデルは変わらず、非正規労働者は労使の賃金交渉から排除されてきた。最低賃金の改善が始まったのは、07年の最低賃金法改正で地域ごとに最低賃金を定め、違反者への罰金が2万円以下から50万円以下へと引き上げられてからだ。

 経営者側は最低賃金引き上げへの反発が強いが、相対的貧困を下回る現役世帯のうち、2人以上が働いている世帯が39%を占めている。米国の2倍、スウェーデンやフランスの3倍だ。夫婦共働きでも相対的貧困から抜け出せない社会は異常としかいいようがない。

 08年の自公政権時には「生活保護との整合性だけでなく小規模企業の高卒初任給との均衡を勘案し5年間で(最低賃金を)引き上げる」ことが打ち出された。労使とも重く受け止めて実現すべきだ。働く人が報われない社会に未来はない。

いつつめ:エネルギー選択 付け焼き刃の議論で決めるな(7月25日付・読売社説)

 政府は2030年の電源に占める原子力発電の比率を3案示し、国民に意見を求める手続きを進めている。
 その一つが、抽選で選ばれた国民による意見聴取会だ。聴取会で、電力会社の社員が社名を明かしたうえで原発の利用継続を主張したところ、脱原発を求める出席者から強い批判を浴びた。すると政府は急きょ、電力会社と関連会社の社員に意見表明を認めない方針を決めた。電力関係者というだけで意見表明を封じるのは、言論の自由を抑圧することにならないか。
 新手法の「討論型世論調査」に関する懸念も拭えない。討論を通じて理解を深め、意見の変化を見るという趣旨はわかるが、討論の資料や運営によって考えが誘導される恐れはないだろうか。
 そもそも、政府の示した3選択肢はいずれも達成できないとする声が強い。経済や環境への影響を考慮した中長期のエネルギー政策を打ち出すためにも、政府は選択肢の妥当性を再検討すべきである。
(393字)

いい文章からはいい縮約ができる。でも、内容が400字分よりもちょっと多いから、"政府は実験的な取り組みにとどめ、結果をストレートに政策判断へ反映させてはならない。"の部分を入れることができなかったのが残念。選択肢の妥当性の再検討と、どっちが重要だろう?とまだ悩んでいる。

原文:
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120724-OYT1T01596.htm

 国の将来を左右する重要なエネルギーの基本政策は、付け焼き刃の「国民的議論」で決めるべきものではない。

 政府は2030年の電源に占める原子力発電の比率を、「0%」「15%」「20〜25%」とする3案を示し、どの選択肢が望ましいか、国民に意見を求める手続きを進めている。

 その一つが、抽選で選ばれた国民による意見聴取会だ。8月4日までに全国の計11会場で開く。

 国民に幅広く意見を求めるのは妥当だが、意見聴取会が混乱を招いている事態は看過できない。

 7月15〜16日の聴取会で、電力会社の社員が社名を明かしたうえで原発の利用継続を主張したところ、脱原発を求める出席者から強い批判を浴びた。

 すると政府は急きょ、電力会社と関連会社の社員に意見表明を認めない方針を決め、22日に開かれた2か所の聴取会では、電力関係者4人に発言を辞退させた。

 電力関係者というだけでエネルギー政策に関する意見表明を封じるのは、言論の自由を抑圧することにならないか。政府は、途中でルールを変更した理由をきちんと説明する必要がある。

 原発推進脱原発という不毛な「二項対立」を避けるには、多様な意見を出し合い、冷静に話し合うことが肝心なはずだ。

 意見聴取会で脱原発派が激しいヤジを飛ばすなど、マナー違反が散見されるのも残念である。

 8月4〜5日に実施する新手法の「討論型世論調査」に関する懸念も拭えない。

 エネルギー選択に関する世論調査に答えた全国の約3000人から希望者200〜300人が参加して2日間の討論会を開き、終了後に再び意見を調べる。

 討論を通じて理解を深め、意見の変化を見るという趣旨はわかるが、討論の資料や運営によって考えが誘導される恐れはないだろうか。政府は実験的な取り組みにとどめ、結果をストレートに政策判断へ反映させてはならない。

 そもそも、政府の示した3選択肢はいずれも、水力を含めて現在約10%の再生可能エネルギー比率を25〜35%に引き上げる想定だ。経済界などでは、とても達成できないとする声が強い。

 このままでは、どの選択肢を採用しても、電力を安定供給できる現実的な電源構成となるまい。

 経済や環境への影響を考慮した中長期のエネルギー政策を打ち出すためにも、政府は3選択肢の妥当性を再検討すべきである。

よっつめ:原発事故調報告 責任追及の出発点にせよ(産経新聞 主張 2012/7/24)

 東京電力福島第1原子力発電所事故に関する政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)の最終報告書がまとまった。国会、民間、東電を含めて4つの事故調の報告書が、異なる視点や手法で切り込んだ。
 報告書に共通する一大焦点は菅直人首相官邸の対応である。政府事故調は中間報告で政府の情報収集・伝達・発信の問題点を突き、今回、「首相の現場介入は弊害の方が大きい」と断じた。東電の全面撤退問題では、国会事故調は「全員撤退を決定した形跡はない」とし、菅氏の言い分を否定した。政府事故調にこうした歯切れの良さがない。政府事故調は東電の熱意不足も指弾した。
 各報告書には特徴がある。肝心なのは、そこから何を読み取るかである。政府、電力会社、原発関係者は、4報告書を精読して、教訓をくみ、安全性向上と再発防止に役立てなければならない。そうした教訓を効果的に対外発信し、国際社会でも生かしていく責務が日本政府にある。
(396字)

原文
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120724/plc12072403130006-n2.htm

 東京電力福島第1原子力発電所事故に関する政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)の最終報告書がまとまった。

 国会、民間、東電を含めて出そろった4つの事故調の報告書が、異なる視点や手法で切り込んだ努力は多としたい。

 しかし、この重大事故の実態や原因についてはなお究明不足の面も少なくない。一連の報告書を出発点に、事業者と規制当局、政府の責任を、国会で関係者を証人喚問するなどして厳しく追及してもらいたい。

 報告書に共通する一大焦点は菅直人首相官邸の対応である。

 政府事故調は中間報告で官邸の機能不全など政府の情報収集・伝達・発信の問題点を突き、今回、「首相の現場介入は現場を混乱させるとともに重要判断の機会を失い、判断を誤る結果を生む。弊害の方が大きい」と断じた。菅氏は「原子力に『土地鑑』があると自負していた」とも指摘した。

 しかし、もっと具体的に菅氏の責任に迫ってほしかった。

 東電の全面撤退問題では、国会事故調は「全員撤退を決定した形跡はない」と東電側主張に沿った見解を示し、「全面撤退を阻止した」とする菅氏の言い分を否定した。政府事故調にこうした歯切れの良さがないのは残念である。

 政府事故調は「事故原因を徹底解明、再発防止に役立てようとする姿勢が十分とはいえない」と、東電の熱意不足も指弾した。

 事故の背景に、「事前の事故防止・防災対策」「事故発生後の現場対処」「発電所外での被害拡大防止策」の不備を挙げ、「複合」の言葉で原因をくくっている。歴代及び当時の政府、保安院など規制当局、事業者の東電の3者が引き起こした「人災」と断定した国会事故調に比べ、やや曖昧だ。

 各報告書には特徴がある。肝心なのは、そこから何を読み取るかである。政府、電力会社、原発関係者は、4報告書を精読して、教訓をくみ、安全性向上と再発防止に役立てなければならない。

 そうした教訓を効果的に対外発信し、国際社会でも生かしていく責務が日本政府にあることも、政府事故調の提言にある通りだ。

 「自然が人間の考えに欠落があることを教えてくれたと受け止め、事故を永遠に忘れることなく教訓を学び続けなければならない」。政府事故調畑村洋太郎委員長の結語は、重い。